第4編 有機化合物

第2章 脂肪族炭化水素

1飽和炭化水素 

2不飽和炭化水素

 

 飽和炭化水素

アルカン

直鎖の飽和炭化水素(二重結合や三重結合を持っていない炭化水素)は〔 アルカン 〕と総称される。メタン系炭化水素またはパラフィンとも呼ばれる。アルカンの一般式はCnH2n+2で表される(左下)。また,これらの共通の一般式で表される一群を同族体という。

 
 

アルカンの命名法

直鎖のアルカンは炭素数が14C1C4)までは慣用名を用いC5以上は炭素の数を示すギリシャ語の数詞の語尾をane  (アン)にして命名する(右上)。

枝分かれ(側鎖)のあるアルカンは分子の中で最も長い炭素鎖を主鎖として命名する。そのとき側鎖の位置と数を付けて表す。

 
 

例題 次の炭化水素を命名せよ。 

 

2,2,3−トリメチルペンタン    4−エチル−3−メチルオクタン(側鎖はアルファベット順)

 

 側鎖の名称:同じ炭素数のアルカンの語尾をyl(イル)にする。  例)メタンCH4メタン → CH3-メチル

 

例題 2,2,4−トリメチルへキサンの構造式を書け。

 

【アルカンの性質】

一般的性質

 アルカンは〔 無極性 〕分子なので,分子量が大きいほど融点や沸点が高く,室温で炭素数が4までは気体,5以上で液体,1618以上で固体となる。また,水(極性溶媒)には溶けず,ベンゼンやエーテルなどの有機溶媒(無極性溶媒)には溶ける。


アルカンの反応

  アルカンは塩素や臭素と混ぜ〔  〕を当てると,分子中の水素原子が次々と塩素原子や臭素原子と置き換わった化合物になる。このように,分子中の原子が他の原子や原子団と置き換わる反応を〔 置換反応 〕という。また,置換反応により,塩素化合物ができる反応を〔 塩素化 〕,ハロゲン化物ができる反応を〔 ハロゲン化 〕という。

 
 

【アルカンの異性体】

例題 C5H12の分子式で表される化合物の異性体の構造と名称を答えよ。

 
 

例題 C6H14の分子式で表される化合物の異性体の構造と名称を答えよ。

 
 

例題 ブロモエタンC2H5Br 1molと臭素Br2 1molが反応して生じる化合物で,考えられるものの構造式と名称を全て答よ。 
 

シクロアルカン】

命名法

環状の炭化水素は炭素数の同じ直鎖状の炭化水素名に接頭語として「シクロ」をつける

シクロアルカン… 環状のアルカン。不飽和結合(二重結合や三重結合)を持たない環状の炭化水素一般式は〔 CnH2n 〕で表され,性質はアルカンと似ており,〔 置換 〕反応を起こしやすい。 

 
 

<補足>      

1,炭素数が34のシクロアルカン(シクロプロパンとシクロブタン)は他の炭素数のシクロアルカンに比べて不安定(壊れやすい)である。なぜなら,通常のC-C結合の結合角は約110゜であるが,シクロプロパンとシクロブタンの場合は構造が平面構造しかとれないのでそれぞれ60, 90゜となるためである。炭素数が5以上の場合は立体的な構造をとれるため約110゜となり安定に存在できる。

 
 

2,シクロヘキサンの場合は立体構造の違いにより,いす形と舟形が存
 在する。

 いす形の方が安定で常温ではほとんどがいす形として存在する。